大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(ネ)1833号 判決

控訴人・附帯被控訴人・参加被告・反訴原告(以下「控訴人」という。) 株式会社菊菱商事

右代表者代表取締役 佐々木兵伍

右訴訟代理人弁護士 岡部勇二

被控訴人・附帯控訴人・参加被告・反訴被告(以下「被控訴人」という。) 須賀清一

右訴訟代理人弁護士 中平健吉

参加原告・反訴被告(以下「参加人」という。) 株式会社 須賀

右代表者代表取締役 須賀春代

右訴訟代理人弁護士 河野敬

主文

本件控訴を棄却する。

控訴人は被控訴人に対し別紙物件目録(一)記載の建物のうち同目録(三)記載の部分を明渡し、金一〇八万一〇〇〇円及びこれに対する昭和五二年七月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人のその余の附帯控訴(請求を拡張した部分を含む。)を棄却する。

控訴人及び被控訴人と参加人との間において別紙物件目録(一)記載の建物のうち同目録(二)及び同目録(三)各記載の部分が参加人の所有であることを確認する。

控訴人は参加人に対し別紙物件目録(一)記載の建物のうち同目録(二)及び同目録(三)各記載の部分を明渡し、昭和五四年四月一日から同目録(二)記載の部分の明渡ずみまで一か月一一万七六一八円の割合による金員を支払え。

参加人の控訴人に対するその余の請求を棄却する。

控訴人の反訴請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じて、被控訴人に生じた費用を五分して、その一を被控訴人の負担、その四を控訴人の負担とし、参加人及び控訴人に生じた費用は全部控訴人の負担とする。

原判決中建物明渡を命ずる部分及びこの判決中建物明渡並びに金員支払を命ずる部分は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

1  (控訴の趣旨)

原判決中控訴人敗訴部分を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2  (附帯控訴に対し)

附帯控訴棄却

3  (参加に対し)

参加人の請求を棄却する。

参加による訴訟費用は参加人の負担とする。

4  (反訴請求の趣旨)

被控訴人及び参加人は各自控訴人に対し金三〇〇万円及びこれに対する昭和五六年一月二一日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

反訴による訴訟費用は被控訴人及び参加人の負担とする。

仮執行の宣言

二  被控訴人

1  (控訴に対し)

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

2  (附帯控訴の趣旨)

原判決中被控訴人敗訴部分を取消す。

控訴人は被控訴人に対し昭和四九年一一月一九日から別紙物件目録(一)記載の建物のうち同目録(二)記載の部分(原判決主文第一項記載の建物部分)の明渡ずみまで一か月金七一〇〇円の割合による金員を支払え。

(当審において拡張した請求の一)控訴人は被控訴人に対し別紙物件目録(一)記載の建物のうち同目録(三)記載の部分を明渡し、昭和四九年一一月一九日から右明渡ずみまで一か月金五〇〇〇円の割合による金員を支払え。

(同二)控訴人は被控訴人に対し金一七四万八七四四円及びこれに対する昭和五二年七月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審を通じ控訴人の負担とする。

第三項の明渡部分につき仮執行の宣言

三  参加人

控訴人及び被控訴人と参加人との間において別紙物件目録(一)記載の建物のうち同目録(二)及び同(三)各記載の部分が参加人の所有であることを確認する。

控訴人は参加人に対し別紙物件目録(一)記載の建物のうち同目録(二)及び同(三)各記載の部分を明渡せ。

控訴人は参加人に対し昭和五四年四月一日から右明渡ずみまで、別紙物件目録(二)記載の部分につき一か月金一二万九一二二円、同(三)記載の部分につき一か月五〇〇〇円の各割合による金員を支払え。

参加による訴訟費用は控訴人及び被控訴人の負担とする。

仮執行の宣言

第二被控訴人の本訴請求についての各当事者の主張

一  被控訴人の請求の原因(当審における請求拡張部分を除く。)及びこれに対する控訴人の答弁は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決事実摘示のとおり(ただし、原判決別紙物件目録(一)の表示は本判決別紙物件目録(一)のとおり補正する。)であるから、これを引用する。

1  原判決六枚目裏七行目「徹去」を「撤去」と訂正する。

2  同八枚目裏七行目の末尾に続けて、「なお、本件ビル内の他の貸室については、昭和四九年から同五〇年にかけての契約更新時にいずれも二二ないし二五パーセントの賃料の値上げをしているので、当初の賃料が月額八万九二五〇円であった本件賃貸借部分の昭和四九年一一月一九日以降の適正賃料額は右金額を下らない。」と付加する。

3  同九枚目表三行目二字目以下を次のとおり改める。「請求原因1の冒頭の事実は、賃貸借契約成立の日を除いて認める。契約締結の日は昭和四七年二月九日である。同1(一)の定めは否認する。賃貸借の期間は昭和四七年二月九日から三年間とし、当然に更新することができるとの約定であった。同1の(二)及び(三)は認め、(六)は否認する。」

二  当審において拡張した請求の原因

1  被控訴人は、昭和四七年六月一三日から、控訴人に対し、本件ビルの内別紙物件目録(三)記載の部分(以下「本件倉庫」という。)を、本件賃貸借の継続中に限り、これに伴って、控訴人の備品収納のために無償で使用することを認めた。しかるに、控訴人は、本件賃貸借が終了した昭和四九年一一月一九日以降も本件倉庫を占有しており、その相当賃料額は一か月五〇〇〇円を下らないから、被控訴人は、控訴人に対し、本件倉庫の明渡及び右同日から右明渡ずみまで右金額の割合による賃料相当損害金の支払を求める。

2(一)  控訴人は、本件ビル使用に関し、被控訴人に対し、次のとおり合計一六〇万七八〇〇円の損害を与えた。

(1) テンパーライトガラス扉(ビル入口)破損 二二万六八〇〇円

(2) 便所(地下一階)の扉の破損 二万円

(3) 防火扉を取り外したことによるその整備費用 九万円

(4) ダクト油除去清掃料 二〇万円

(5) 排水ポンプオーバーホール 七万一〇〇〇円

(6) 安眠妨害による慰藉料 一〇〇万円

控訴人は、本件賃貸借部分における店舗「ファラオ」(以下「本件店舗」という。)において、エレクトーン、スピーカー等を設置し、開店当初から連日、深夜午前〇時二〇分から同五時までバンド演奏を行い、マイクを使って唄を歌うなどして騒音を発し、客や従業員が出入りする際の喧騒、店舗内外における客や従業員の喧嘩等と相まって、本件ビル一階に起居する被控訴人及びその妻の安眠を妨害していて、被控訴人の再三の中止要求を無視して現在までこれを続けている。これは建物の通常の使用方法を逸脱するものであり、しかも、控訴人は、本件賃貸借にあたり、被控訴人及び第三者に対して迷惑を及ぼすことなく賃借部分を使用すべきことが義務づけられているにかかわらず、これに違反するものであるから、損害賠償の責を負うべきである。

(二) 被控訴人は、昭和四九年一一月一九日から、電気、ガス、水道料金等の値上げに伴って、控訴人の負担すべき共益費(本件ビルの共用部分の電気料その他の必要費用を各賃借人が賃借面積の割合に応じて負担すべきもの)を二五パーセント値上げしたので、控訴人は、被控訴人に対し、右同日から昭和五二年七月分までの共益費のうち支払済の金額と増額後の金額との差額一四万〇九四四円を支払う義務がある。

(三) よって、被控訴人は、控訴人に対し、右(一)、(二)の金員合計一七四万八七四四円及びこれに対する本件附帯控訴状による請求の日の翌日の昭和五二年七月二七日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

三  拡張した請求の原因に対する答弁

1  請求原因1のうち、控訴人が、被控訴人から本件倉庫を借り受け、これを昭和四九年一一月一九日以前から占有していることは認めるが、これは賃料月額五〇〇〇円で賃借しているものであり、右賃料は当初から共益費に含めて請求され、現在の共益費約一万七八〇〇円は右賃料五〇〇〇円を含む金額であって、控訴人はこれを支払っている。なお、被控訴人は、本件倉庫及びこれに至る廊下の鍵を控訴人に渡さないので、控訴人は、毎夜翌日午前五時ころまで営業するのに、本件倉庫は午後一〇時ころまでしか使用しえず、非常な不利益を受けている。

2  同2の各事実は争う。

四  控訴人の抗弁

1(一)  本件賃貸借は、いわゆる裸のビルの賃貸借であり、控訴人は、昭和四六年一一月一九日当時コンクリート工事のみが終了した未完成建物のうちの本件賃貸借部分の立体的空間を賃借して、被控訴人の承諾を得て約一八〇〇万円の費用をかけ内外装工事及び造作工事を施し、店舗を新築したものであって、このような裸ビルの賃貸借には借地法が準用されるという商慣習があり、したがって、本件賃貸借の存続期間は、同法二条により、堅固な建物の所有を目的とする土地賃貸借として六〇年であり、そうでないとしても二〇年である。すなわち、控訴人は、本件賃貸借部分及び廊下、地下一階に至る階段の部分について、契約に従い、自らの設計に基づき、自費をもって、天井を張り、壁を塗り、床を張り、ドアを取付ける等の内外装工事をし、かつ、電気、水道、ガス、冷暖房設備等の造作工事をして、昭和四七年二月一四日に工事を完成させたもので、これら内外装部分及び造作は、控訴人が権原に基づき本件ビルに付属させたものとして、その所有権を取得したものであるが、そもそも、飲食店用などの個性的内装を必要とする貸ビルについては、賃貸人が内装、外装を行わないでコンクリート工事を完成させたのみの裸のままでこれを賃貸し、内装、外装工事の一切を賃借人の自由に委ねるという商慣習が経済的、社会的必要に基づき成立しているのであり、この事実は、本件ビルにおいても二階ないし六階の貸事務所の部分については、本件賃貸借部分と異なり、被控訴人が内装、外装工事、冷暖房、電気関係設備等を完成させたのちに賃貸していることからも明らかである。そして、本件賃貸借における賃貸期間三年の定めは、三年ごとに被控訴人が更新料として賃料一か月分相当額を取得しかつ賃料を増額しうることを定めた趣旨であると解すべきである。

(二) 控訴人は、本件賃貸借部分を店舗として飲食店営業をするためにこれを賃借したものであり、一般に、飲食店営業は、長年月にわたり顧客と信用とを獲得しこれらを営業上の利益とする継続的事業であるから、その営業権は居住権と同様に保護されなければならず、また、一般貸ビルは、これを賃貸し賃料を得ることを目的として建築されたものであるから、賃貸人が自己使用を理由に更新拒絶又は解約の申入れをすることは貸ビル営業の目的に反することとなる。また、飲食店営業のための賃貸借においては、賃借人は、その営業内容と賃借人の個性とによって店舗の諸設備をなすのであるから、諸設備をある程度自由に施工しうる必要があり、したがって、一般に店舗用の貸ビルは、コンクリート工事完成の裸の状態で賃貸され、賃借人は、自己の設計に基づいて、その内装・外装工事並びに造作工事を自由に行うことができるとともに、将来においても、その内外装及び造作の模様替えを自由になしうるという契約形式が商慣習として確立されている。それ故、貸ビルを営業用店舗として賃貸する以上、その賃貸借は期間の定めのないものとして、貸ビルの存在するかぎり存続し、なお、賃借権を自由に譲渡することができるというのが現在の商慣習であり、本件賃貸借の契約内容もこのような一般貸ビルの商慣習に従って定められるものである。しかも、控訴人は、本件賃貸借時に、被控訴人に四四六万二五〇〇円(三・三平方メートルあたり二五万円)の保証金を支払っているが、この金額は賃料月額の五〇倍に相当し、かつ、被控訴人が負担した本件賃貸借部分の建築費の額に相当するものであって、保証金は建築費の補償として支払われたものである。したがって、本件賃貸借における期間三年の定めは、更新料取得及び賃料増額の機会を被控訴人に得させるためのものであって、本件賃貸借は、期間の定めのないものであり、控訴人の営業が存続するかぎり、継続するものである。

2(一)  被控訴人及び参加人は、後記反訴請求原因一のとおり、虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔し、本件原判決を詐取したうえ、同判決日以後、控訴人の営業を妨害する目的をもって、本件店舗の従業員らに対し「控訴人が判決で負けたので、この店は六か月くらいで明渡すことになる。」などと言って脅し、控訴人に見切りをつけた従業員らをして次々に全員退職するに至らせ、また、控訴人の取引先や得意先にも同様のことを告げて、控訴人の信用を著しく失墜させた。控訴人は、右不法行為により一〇〇万円相当の損害を被った。

(二) 控訴人は、本訴において、反訴請求原因記載の損害賠償請求権のうち反訴で請求する金員の残金と右(一)の損害賠償請求権との合計六九七万八一〇〇円を自働債権とし、被控訴人の控訴人に対する昭和五三年四月分から昭和五四年一月分までの賃料又は賃料相当の損害金計二二〇万円及び被控訴人並びに参加人の昭和五四年二月分から昭和五五年一月分までの共益費計七〇万九九一四円合計二九〇万九九一四円とその後に発生した賃料又は賃料相当損害金の債権とを受働債権として、対当額で相殺する。

五  抗弁に対する被控訴人の答弁

1  抗弁1(一)のうち、本件賃貸借が裸ビルの賃貸で、内外装工事のすべてを控訴人に行わせたものであること及び控訴人主張の商慣習の存在は否認し、借地法準用の主張は争う。本件賃貸借部分は、被控訴人において賃貸ビルとして必要なすべての設備を整え、いわゆる造作にあたる内装工事のみを残して完成したうえで賃貸したものである。そして、本件賃貸借においては、控訴人が造作を設置するについては設計図、配線配管図を提出して被控訴人の承諾を得ることを要するものと定められていたにもかかわらず、控訴人は、被控訴人に無断で内装、造作工事をしたのである。なお、控訴人が取付けたと主張するドアは、被控訴人が設けた扉を無断で取外して新たに取付けたものである。

2  同1(二)のうち、保証金の金額は認め、その余の主張は争う。なお、本件賃貸借部分の建築費の額は概算三・三平方メートルあたり四五万円であり、保証金の額は高額とはいえない。

第三参加についての各当事者の主張

一  参加人の請求の原因

1  参加人は、昭和五四年三月三〇日、被控訴人からその所有の別紙物件目録(一)記載の建物(本件ビル)を買い受けて、その所有権を取得し、同年九月一二日所有権移転登記を経由した。

2  控訴人は、右建物のうち別紙物件目録(二)記載の部分(本件賃貸借部分)及び同(三)記載の部分(本件倉庫)を占有している。

3  被控訴人は控訴人に本件賃貸借部分を賃貸し、本件倉庫を使用貸していたが、右賃貸借及び使用貸借は終了した。その経緯については被控訴人の主張を援用する。

4  仮に被控訴人主張の期間満了による賃貸借終了の主張が認められないとすれば、参加人は、控訴人に対する本件賃貸借部分についての賃貸人の地位及び本件倉庫についての使用貸主の地位を承継したものであるところ、参加人は、昭和五四年四月一日以降の一か月一〇万七一〇〇円の割合による賃料及び一か月二万二〇二二円の割合による共益費について、控訴人に対し、同年四月二八日以降再三にわたり支払を催告し、とくに同年八月三一日には被控訴人との連名の書面をもって同日までの滞納分の全額の支払を催告し、同五五年二月二九日にも控訴人の役員佐々木武に同年一月末日現在の滞納金額明細書を手交して速やかにその全額を支払うよう催告したが、その支払がないので、本件「独立当事者参加の申立」の書面(同年三月一日提出、同年五月八日送達)をもって、控訴人に対し、本件賃貸借及び前記使用貸借を解除する意思表示をした。

5  よって、参加人は、被控訴人及び控訴人に対し、本件賃貸借部分及び本件倉庫が参加人の所有に属することの確認を求め、控訴人に対し、右各部分の明渡並びに昭和五四年四月一日から本件賃貸借部分の明渡ずみまで一か月一〇万七一〇〇円の割合による賃料相当損害金又は右同日から前記4による賃貸借終了の日までの同一割合による賃料とその翌日以降の賃料相当損害金、右同日から右明渡ずみまで一か月二万二〇二二円の割合による共益費、右同日から本件倉庫明渡ずみまで一か月五〇〇〇円の割合による賃料相当損害金の各支払を求める。

二  請求原因に対する答弁及び抗弁

1  控訴人

(一) 請求原因1及び2の各事実は認める。

(二) 同3のうち控訴人が被控訴人から本件賃貸借部分を賃借し、本件倉庫をも借り受けていたことは認め、その余は争う。この点は被控訴人の主張に対する答弁及び抗弁と同一である。

(三) 同4のうち参加人が控訴人に対する貸主の地位を承継したことは認め、その余の主張は争う。なお、本訴に対する抗弁(前記第二、四2)主張の相殺により、参加人主張の債務不履行に基づく本件賃貸借の解除権は消滅した。

(四) 金銭請求に対しては、前記相殺を主張する。

2  被控訴人

請求原因12及び4の各事実は認める。

第四反訴についての各当事者の主張

一  反訴請求の原因

1  前記のとおり、本件賃貸借の期間は昭和四七年二月九日から三年間であるのに、被控訴人は、これを同四六年一一月一九日から三年間であるとしたうえ、正当事由たりえない事由に基づく更新拒絶により、本件賃貸借は同四九年一一月一八日かぎり終了した旨虚偽の主張をして原裁判所を欺罔し、本件原判決を詐取したものであり、控訴人は、被控訴人のかかる不法行為により本件店舗における営業を妨害された。控訴人は、本件賃貸借にあたり被控訴人に保証金四四六万二五〇〇円を支払ったが、これは、「飲食店などの営業をする者は、貸主の本体部分の裸ビルの建築費用を分担し、賃借部分に内外装工事をして店舗を構築し、長期の継続的建物賃貸借契約の信頼関係を設定し、店舗の譲渡権利を取得する。」との慣行に従って譲渡権利を取得する目的をもってしたものであり、右保証金の額は賃料の五〇か月分及び本件賃貸借部分の建築費に相当するものであったのに、僅か三三か月で賃貸借が終了したとされたのである。そのため、控訴人は、本件店舗における営業につき原判決言渡の日の昭和五二年四月二八日から現在まで右保証金の額に対する年八・八パーセントの割合の利息一か年三九万二七〇〇円に相当する損害を被っているので、被控訴人に対し、右損害のうち三か年分として一一七万八一〇〇円の損害賠償請求権を有する。

2  本件賃貸借には、本件ビル二階正面左側上部壁面に控訴人の営業のための袖看板を設置しうるとの約定があり、控訴人は、契約当初からしばしば被控訴人に対し袖看板を使用させるよう申し入れたが、被控訴人は、控訴人の営業を妨害する目的をもってこれを拒否してきて、控訴人はいまだに袖看板を使用することができないでいる。右取付個所は、五反田駅から見える位置にあり、控訴人は、本件店舗における営業を夕方から翌日午前五時までしているので、袖看板を設置しえないことにより、少なくとも一日五〇〇〇円、一か月につき二六日営業として一三万円以上の損害を被っており、したがって、被控訴人に対し、本件原判決言渡の日から三年間に被った損害の賠償請求権四六八万円を有する。

3  控訴人は、約定に基づき、被控訴人の承諾を得て本件店舗内外の改装及び造作設備の変更工事をすることができるので、昭和五三年七月三一日ころ、被控訴人に対し、見積書を提示して店舗内外装工事の承諾を求めたが、被控訴人は、理由を示さず承諾を拒んだ。なお、右工事は、被控訴人主張の前記第二、二2(一)の便所のドア、ダクトの取替工事、排水ポンプのオーバーホール工事、防火扉の取替工事、階段のじゅうたんの張替工事を含んでいたが、被控訴人は、控訴人の営業を妨害する目的で、承諾をしなかったものである。控訴人は、同年八月中に改装工事をすることができなかったため同年九月一日から現在まで一か月につき一三万円以上の損害を被っており、したがって、被控訴人に対し昭和五三年九月一日から二年分三一二万円の損害賠償請求権を有する。

4  参加人は、被控訴人から本件ビルを買い受けて所有権を取得し、賃貸人の地位を承継したが、これにより被控訴人の右不法行為による控訴人の営業に対する侵害の状態を継続しているのであるから、被控訴人とともに右損害を賠償する責を負う。

5  よって、控訴人は、被控訴人及び参加人に対し、各自右一ないし三の合計八九七万八一〇〇円のうち三〇〇万円及びこれに対する本件反訴状送達の日の翌日の昭和五六年一月二一日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  反訴に対する参加人及び被控訴人の態度

反訴請求に同意しない。

理由

第一被控訴人の本訴請求について

一  請求原因(請求拡張部分を除く。)に関する当裁判所の判断は、次のとおり訂正、削除、付加するほか、原判決理由中の説示(原判決一四枚目表四行目から一九枚目表四、五行目「いうべきである。」まで)と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一四枚目表四行目「1(一)(二)(三)」を「1の冒頭のうち賃貸借成立の日を除く事実及び1の(二)、(三)」と改め、同行の末尾に続けて次のとおり付加する。

「成立に争いのない甲第一四号証、乙第八号証、原審証人藤田和夫及び同佐々木武の各証言、原審における控訴人会社代表者並びに原審及び当審における被控訴人本人の各尋問の結果によれば、被控訴人は、昭和四六年一一月二日、佐々木兵伍から本件賃貸借部分賃借の申込みを受け、ひとまずこれを諒承して保証金の約一割に相当する四五万円を預り金名義で受領し、その数日後、同人に貸借の合意の解消を申し出たものの、同人及び仲介人らの懇請によって結局賃貸を承諾して、同月中に、賃借人側が施すべき内装部分を残して完成した本件賃貸借部分を同人に引き渡したこと、そこで、同人は、同年一二月中に資材を搬入して翌四七年一月に内装工事を始め、同年二月初めにこれを完成し、また、同月一日同人が代表者となって控訴人会社を設立し、同月一四日、控訴人において本件賃貸借部分を店舗とするスナックを開店したこと、同月九日、被控訴人と控訴人との間に店舗賃貸借契約証書が作成されたが、その際、すでに前記のころに引渡しがなされ、賃借人側で内装工事に着手することが可能となっていたことから、賃貸借の期間は遡って起算することとし、右証書に、賃貸借契約の期間は昭和四六年一一月一九日より同四九年一一月八日までの満三か年とし、期間満了の場合は協議のうえ更新することができる旨記載されたこと、もっとも、被控訴人は、本件賃貸借部分に関する賃料を昭和四九年一月分までは請求せず、同年二月分は半額を控訴人から受領したこと、以上の事実が認められ、この事実によれば、本件賃貸借契約が成立したのは控訴人会社設立後の昭和四七年二月九日であるが、賃貸借の期間は同四九年一一月一八日までと定められたものと認めるべきである。」

2  同一四枚目表五行目冒頭「二」を削除する。

3  同表五行目「(六)」を削除する。

4  同表六行目の次に行をかえて次のように付加する。

「二 控訴人は本件賃貸借に借地法の準用を見る等の抗弁をする(本判決事実摘示第二の四1)。その理由のないことは後述のとおりである。」

5  同一七枚目表八行目「第二八号証の五、」の次に「弁論の全趣旨により昭和五一年六月一八日店舗への階段の壁じゅうたんが剥れて露出した非常ベルの隠し配線を撮影した写真であることが認められる甲第三三号証の八、当審における被控訴人本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第四七号証、」を付加し、「原告(」を「原審及び当審における被控訴人(原審では」と改め、同一〇行目「検証の結果」の次に「並びに弁論の全趣旨」を付加する。

6  同一八枚目表一行目「(4)」を削り、同三行目末尾に続けて、次のとおり付加する。

「本件ビルの他の各室が貸事務所、被控訴人経営の質店及び住居として使用されるものであり、被控訴人において、本件賃貸借部分の店舗も右の本件ビルの性格にふさわしい喫茶店に限るべき旨の希望を当初は表明していたことから、控訴人がスナックを営業するにしても、その営業が深夜に及びあるいは夜を徹して行われることは、本件ビルの性格や場所柄にふさわしくなく、被控訴人の意思にも反するであろうことは、控訴人においてもこれを容易に了知しえたにかかわらず、控訴人は、連日夕刻から夜を徹し翌日午前五時ころまでスナック営業を続けたこと(本件店舗の営業時間の制限について明示の約定がなされた確証はなく、少なくとも、請求原因1(六)主張のように、終業時間を午後五時三〇分とすることは、当初予定された喫茶店営業にすら困難な制約と考えられ、そのような特約は容易に認めがたい。)。」

7  同一八枚目表九行目「事実」の次に「(パトカーが出動し控訴人代表者本人が逮捕されたことを除く。)」を加え、同一〇行目「6」を「5」と改める。

8  同一八枚目裏五行目の次に左のとおり付加する。

「なお、原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果並びにこれによって真正に成立したものと認められる甲第三八号証、第三九号証の一ないし四、第四〇及び第四一号証の各一ないし三によれば、本件ビルの三階、五階、六階の各貸事務所については、昭和五〇年四月から同五一年二月にかけての契約更新時に賃料が二二ないし二五パーセント増額された事実が認められるが、店舗向けの地下室であって右貸事務所とはまったく同一条件とは認められない本件賃貸借部分の賃料が、当然に右と同一割合で増額されるのが相当であったとは認められず、この点に関する被控訴人の主張は採用しない。」

9  同一八枚目裏一〇行目「本件」から同一九枚目表一行目「するも、」までを「前示の各事情を考慮すれば、」と改める。

10  冒頭引用部分の末尾(同一九枚目表五行目)に続けて次のとおり付加する。

「なお、後記のとおり被控訴人は本件ビルを参加人に譲渡したが、賃貸人が賃貸借契約解除後に目的物の所有権を失った場合においても、賃貸借終了を原因とする目的物の返還請求権が失われるものではないことはいうまでもなく、また、右返還請求権に対する相手方の義務の履行遅滞による損害賠償請求権も、相手方が新所有者に対し不法占有による損害賠償義務を履行するまでは、特段の事由のないかぎり、失われないものと解すべきである。」

二  次に当審で拡張された請求について判断する。

1  控訴人が被控訴人から本件倉庫を借り受け占有している事実は当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、被控訴人は、本件倉庫を、本件賃貸借部分について賃貸借の存続する間これに付随して使用しうるものとする約定により、無償で控訴人に使用させているものであることが認められ、これに反して、その権利関係が賃貸借である旨の控訴人の主張に沿う証拠はない。そして、本件賃貸借が終了したことは前記一のとおりであるから、本件倉庫に対する使用貸借も終了したものというべきであり、被控訴人が本件ビル譲渡後も本件倉庫の返還請求権を有することは、前記一と同様である。次に本件倉庫に対する賃料相当損害金の請求について、被控訴人本人は、当審における尋問の結果中において、他の貸室の賃料が昭和四六年当時一坪(三・三平方メートル)あたり一か月六〇〇〇円であったから、一坪弱の本件倉庫については同五〇〇〇円が相当である旨供述するが、本件賃貸借部分の当初の賃料は三・三平方メートルあたり五〇〇〇円であったし、倉庫部分の相当賃料額を他の事務所、店舗等の賃料と同一割合で算定することが合理的であるとは認めがたいから、右供述は採用するに足りない。そして、他に本件倉庫の相当賃料額を確定するに足る資料はないから、被控訴人の右損害の主張は失当というほかはない。

2(一)  次に請求原因二2(一)の損害賠償請求について検討する。

(1) 同(1)のビル入口のガラス扉については、その破損の態様も明らかでないうえ、右入口は、本件ビルの使用者の全員が出入する個所であると考えられるから、その破損が控訴人の行為によって生じたものであるとも推定しえず、この点の被控訴人の主張は採用しえない。

(2) 《証拠省略》に、前記認定の請求原因(原判決摘示)3(二)の事実を総合すれば、被控訴人は、控訴人の行為によって生じた破損及び汚損を回復する費用として請求原因(本判決摘示)二2(一)の(2)ないし(5)の各金額合計三八万一〇〇〇円を要し、同額の損害を被ったことが認められ(る。)《証拠判断省略》

(3) 《証拠省略》によれば、控訴人の開店以来、本件店舗における前記認定のような夜を徹してのバンド演奏や歌声、客や従業員の喧嘩、早暁閉店時の出入口付近での喧騒などのため、本件ビル内に起居する被控訴人の家族、とくに質店店舗の管理のため一階で就寝する必要のあった被控訴人自身は、安眠を妨げられ、控訴人の占有する間長期間にわたり甚だしい苦痛を被っていて、その苦痛は、本件賃貸借部分使用の対価として賃料又は同相当損害金を収受することをもって受忍すべき限度を超えるものであると認められ、控訴人のこのような行為は、本件賃貸借における前記認定の約旨に反し、また被控訴人に対する不法行為ともいいうるものであるから、控訴人は、被控訴人の被った損害に対して慰藉料を支払うべきであり、その金額は七〇万円とするのが相当である。

(4) したがって、被控訴人が控訴人に対し請求しうる損害賠償の額は右(2)と(3)の合計一〇八万一〇〇〇円である。

(二) 次に共益費差額の請求について検討する。

《証拠省略》によれば、共益費とは、本件ビル内の共用部分の電気料、清掃費その他保守管理費用等を各賃借人が分担する趣旨であらかじめ一定額を約定して毎月賃借人から被控訴人に支払うものであって、本件賃貸借においては、当初その支払の約定のみがあって金額は定められていなかったが、昭和四八年ころから一か月一万七六一八円と定められ、その支払がなされていたこと、被控訴人は、少なくとも昭和五三年一〇月までは、控訴人に対し、右と同額の月額一万七六一八円の請求をしていたこと、以上の事実が認められるが、被控訴人主張の昭和四九年一一月一九日から同五二年七月分までの共益費について、前記金額から二五パーセント増額する旨の合意が当事者間に成立した事実は認められないし、仮に、前記共用部分の費用に属する被控訴人の支出が増加したときはその実額分だけ共益費が当然に増額され又は被控訴人の一方的意思表示によりこれを増額することができる旨の約定があったとしても、前記期間の支出の実額が右の金額だけ増加した事実は、《証拠省略》によっても、これを認めるに十分でない。したがって、共益費が増額されたことを主張して、差額の支払を求める被控訴人の請求は失当である。

三  抗弁について判断する。

1  控訴人は、本件賃貸借は裸ビルの賃貸借であるから、借地法の準用がある旨主張する。しかし、《証拠省略》によれば、被控訴人は、本件ビルの建築にあたり、建物本体の工事を完了したことはもとより、廊下等共用部分は内装の仕上げまで行い、本件賃貸借部分内部においても、電気、ガス、給排水の配線、配管を壁面まで施し、排煙設備も天井に吸込口、排気口を設け、室内の天井はプラスターボードを張りビニールペンキを塗り、壁面はモルタルにペンキ塗りをし、床にはビニールタイルを張るなどして一通りの内装工事を終え、控訴人の使用目的に応じた装飾的な内装や造作設備と、その使用方法によって定まるべき室内の配線、配管工事の部分のみを残した状態で、本件賃貸借部分を控訴人代表者に引き渡したものであることが認められ、したがって、本件賃貸借部分は、引渡当時、建物として完成したものであったことが明らかであって、本件賃貸借を土地の賃貸借に準ずるものとみることができるような事情は見出すことができない。そして、このように内装の仕上げ程度と造作工事を残したビルの賃貸借に借地法を準用するという商慣習の存在を認めるべき証拠はない。また、控訴人が飲食店営業を目的として本件賃貸借部分を賃借し、自己の費用をもって内装、造作工事を行い、その主張のように賃料の五〇か月分に相当する保証金(《証拠省略》によれば、右保証金は敷金たる性質を有するものと認められる。)を支払ったからといって、そのために、本件賃貸借が、本件ビルが存続し又は営業が継続されるかぎり存続すべきものとされ、あるいは期間の定めのないものとされる根拠はなく、そのような慣習の存在を認めうる証拠はない。したがって、本件賃貸借は、前記認定の約定どおり昭和四九年一一月一八日を期限とするものであって、控訴人の抗弁1は失当である。

2  抗弁2(一)の損害賠償請求権の主張は、本件賃貸借が終了した旨の被控訴人の主張が虚偽であり、これを認めた原判決が誤りであることを前提とするものと解されるところ、右被控訴人の主張が理由があることはすでに判示したとおりであるから、控訴人の右主張は失当であり、また、反訴請求原因記載の各債権の主張が理由がないことも、のちに反訴について判断するとおりである。よって、抗弁2も採用しえない。

第二参加人の請求について

参加人がその主張の日に被控訴人から本件ビルを買い受けその所有権を取得した事実並びに控訴人がそのうち本件賃貸借部分及び本件倉庫を占有している事実は、各当事者間に争いがない。

被控訴人と控訴人との間の本件賃貸借及び本件倉庫の使用貸借が終了したことは、前記第一において判示したとおりであるから、参加人のその余の主張について判断するまでもなく、参加人が控訴人に対し右各占有部分の明渡を求める請求は理由がある。次に、本件賃貸借部分に対する損害金の請求は、右所有権取得後の昭和五四年四月一日から右部分明渡ずみまで一か月一〇万円の限度で理由があり、その余の金額は証明がないので失当であり、本件倉庫に対する損害金の請求は、その金額の証明がないから失当であって、これらの点も前記第一の判断と同様である。また、共益費については、その性格が前記第一、二、2(二)認定のようなものであることからして、控訴人は、権原に基づかないで本件賃貸借部分を占有している間、参加人に対してもこれを支払うべきであり、その金額は、本件賃貸借存続中被控訴人に支払っていた金額と同一の月額一万七六一八円であると推定されるが、その余の金額については前記と同一の理由により、その支払義務を認めることができない。なお、控訴人の相殺の抗弁が理由がないことも、前記判断のとおりである。

第三反訴について

一  本件反訴は当審で提起されたものであり、これに対し被控訴人及び参加人は同意していない。しかし、本件反訴のうち請求原因1は、被控訴人が本件賃貸借の終了につき虚偽の事実を主張し、原審裁判所の判断を誤らせて、本訴の明渡請求を認容する原判決を詐取したものであることを主張し、これにより被った損害の賠償を求めるものであって、損害の発生及び数額の点を除いては、本訴明渡請求とまったく争点を共通にし、本訴請求の当否がただちにこの部分の反訴請求の当否を左右する関係にあることが明らかであり、反訴請求原因2及び3も、本件賃貸借の存続を前提とし、その契約上の権利の行使を妨げられたことによる損害の賠償を請求するものであって、本件賃貸借の終了の有無によって結論を左右されるものであり、本訴請求と牽連関係が認められることはもとより、本訴請求及び反訴請求原因1と請求の基礎を同じくするものと解される。このような場合には、反訴における実質的な争点は、すでに第一審以来本訴に関して審理されてきているのであるから、控訴審において反訴を提起することを許しても、相手方の審級の利益を害するものではないということができる。したがって、このような反訴は、控訴審においても、相手方の同意なくしてこれを提起することができるものと解すべきである。また、参加人に対する反訴は、そもそも参加人が当審において初めて参加したことによって、これを提起することとなったものであるから、参加人の審級の利益を害する余地はなく、その提起に参加人の同意を必要としないものというべきである。よって、本件反訴は適法である。

二  そこで、反訴請求の当否について検討する。

被控訴人の本件賃貸借終了を原因とする本件賃貸借部分明渡請求が理由があることはすでに判示したとおりであり、したがって、これを認容した原判決は相当であるから、反訴請求原因1は、すでにこの点において失当である。次に、同2の袖看板に関して控訴人の主張する損害は、本件賃貸借が終了し、控訴人が本件賃貸借部分の明渡義務を遅滞している期間に対するものであり、同3の店舗改装等の工事の承諾を求めたのというのも、本件賃貸借終了後のことであって、その権利の存しないことが明らかであり、いずれも被控訴人の責に帰しうる損害の発生する余地のないものである。したがって、その余の点について判断するまでもなく、反訴請求はすべて失当である。

第四結論

以上の次第で、被控訴人の本訴請求(請求拡張部分を除く。)のうち、本件賃貸借部分の明渡及び昭和四九年一一月一九日から右明渡ずみまで一か月一〇万円の割合の遅延損害金の支払を求める部分は、理由があるから、これを認容し、その余は、理由がないから、これを棄却すべく、これと同趣旨の原判決は相当であって、本件控訴及び附帯控訴のうち右請求棄却部分に対する部分は、いずれも理由がないから、これを棄却する。被控訴人の当審で拡張した請求は、本件倉庫の明渡並びに損害賠償一〇八万一〇〇〇円及びこれに対する本件附帯控訴状による請求の日の翌日であることが記録上認められる昭和五二年七月二七日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分にかぎり、理由があるから、これを認容し、その余は、失当であるから、これを棄却する。参加人の請求は、控訴人及び被控訴人に対して本件賃貸借部分及び本件倉庫の所有権確認を求め、控訴人に対し、本件賃貸借部分及び本件倉庫の明渡並びに所有権取得後の昭和五四年四月一日から本件賃貸借部分の明渡ずみまで一か月一一万七六一八円の割合による賃料相当損害金及び共益費の支払を求める限度において、理由があるから、これを認容し、その余は、失当であるから、これを棄却する。控訴人の反訴請求は、理由がないから、これを棄却する。よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 野田宏 藤浦照生 裁判長裁判官沖野威は差支えにつき署名捺印することができない。裁判官 野田宏)

〈以下省略〉

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